京都大学大学院医学研究科クリニカルアナトミーラボ

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感謝と外科医としての使命感  【呼吸器外科】

2024年1月21日、2月18日 参加

京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 松本瞭

 何よりもまず初めに、この度のCadaver Surgical Trainingは外科医として修練中の我々にとって大変ありがたい経験でした。このような貴重な機会を頂けたことに、ご献体くださった方々並びにそのご遺族の方々へ、心より感謝申し上げます。

 我々修練医は、日々上級医の指導のもと、手術や診療現場に立ち会い研鑽を行っている身分です。当然実際に手術を行い執刀させていただく機会もありますが、難易度の高い手技等には、触れる機会が少ないのも現状です。いつか自分が全責任を持って、難易度によらず、自分の専門とする手術手技全てを完遂することができるようになれるよう、努力しております。この度のCadaver Surgical Trainingも、そのような修練の一貫として、参加させていただきました。

 実際にご献体を前にしてまず感じたことは、目の前にあるのは天命を全うされてはいますが、紛れもなく生命であるということです。皮膚や臓器の感触は普段の手術と何ら変わらず、ご献体は自分の「患者」であり、普段以上に気を引き締めて「執刀」を開始しました。

 私は今回、気管支形成と肺動脈形成、またTransmanubrial approachという開胸法を、経験させていただきました。これらは頻度が少なく、また高難易度であることから、普段の修練の中ではなかなか機会を得ることができない手術手技です。指導医の先生のアドバイスを受けながらではありますが、自分自身で肺の血管や気管支を同定し、その周囲を剥離し、切断し、吻合しました。特に、自分一人の吻合で、切断後にひしゃげた血管・気管支が再び管状に形成されていくのは感動的でした。今回のトレーニングは自分にとっては貴重な「執刀」の機会であり、ご献体いただいた方は、自分にとっての貴重な「患者」でした。

 今後の外科人生の中でも、今回の経験で得たものは大きなものとなると思います。このような貴重な機会の上に、自分の外科医という仕事は成り立っているということを忘れることなく、今後も修練を重ねていこうと思います。

 改めて、この度は、このような貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。